ウケツギノート

制度と手続き

最低賃金の引き上げは12月2日まで順に発効。承継した会社の賃金を、発効日までに確かめる手順

最低賃金の発効が12月2日まで続くことを大きく示し、承継した会社の賃金を確かめる手順を並べた表紙
最低賃金の発効は、12月2日まで続く。最低賃金の引き上げは12月2日まで順に発効。承継した会社の賃金を、発効日までに確かめる手順の要点を数字で示した図
図:最低賃金の発効は、12月2日まで続く(出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(2026年9月3日)/厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」)
この記事の要点
  • 令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円で、昨年度から56円上がります。佐賀・京都・岩手・熊本・沖縄の5府県は、11月15日から12月2日にかけて発効します。
  • 月給の人は、精皆勤手当・通勤手当・家族手当や残業代を除いた額を、1か月平均の所定労働時間で割って比べます。時給の人より見落としやすくなります。
  • 下回った分は差額を払う義務があり、罰則もあります。中小PMIガイドラインも法令違反を正すことを人事・労務の1つ目のゴールにしています。

令和8年度の最低賃金は、10月1日から12月2日までに都道府県ごとに順に上がります。譲り受けたばかりの会社では、給与の計算を前の担当者のやり方のまま続けていることが多く、引き上げへの対応が漏れやすくなります。この記事では、発効日までに誰の賃金をどう確かめ、下回っていたら何を決めるかを整理します。

今年の最低賃金は、いつ・いくら上がるか

令和8年度の地域別最低賃金は、47都道府県で54円から65円上がります。発効日は都道府県ごとに違い、2026年10月1日から12月2日までに順に発効します。

厚生労働省は2026年9月3日に、全ての都道府県の答申をまとめて公表しました。全国加重平均は1,177円で、昨年度の1,121円から56円上がります。厚生労働省は、この上げ幅が昭和53年度に目安制度が始まって以降で2番目の高さだとしています。最も高いのは東京都の1,280円、最も低いのは宮崎県の1,085円です。

多くの都道府県は10月中に発効しました。11月に入ってからの発効は次のとおりです(厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」)。

都道府県改定前改定後引上げ額発効日
山梨・徳島・愛媛・大分1,052円・1,046円・1,033円・1,035円1,113円・1,103円・1,093円・1,096円61円・57円・60円・61円2026年11月1日
長崎1,031円1,087円56円2026年11月2日
佐賀1,030円1,095円65円2026年11月15日
京都1,122円1,180円58円2026年11月16日
岩手1,031円1,090円59円2026年12月1日
熊本1,034円1,092円58円2026年12月1日
沖縄1,023円1,086円63円2026年12月2日

承継の手続きが秋に終わった会社では、最初の100日のあいだに新しい額が発効することになります。前の担当者が毎年の改定を見て時給を上げていたのか、誰も見ていなかったのかを、まず確かめます。

承継した会社で、下回りやすいのは誰か

下回りやすいのは、時給が最低賃金に近いパートやアルバイトと、手当の多い月給の人です。地域別最低賃金は雇用形態や呼び方に関係なく、その都道府県の事業場で働く全ての人に適用されます。

厚生労働省の最低賃金特設サイトは、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など、呼び方に関係なく適用されると書いています。試用期間中の人も、都道府県労働局長の許可を受けていなければ、通常どおり適用されます。減額の特例が認められるのは、許可を受けた場合に限られます。

時給の人は、時給と新しい額を並べれば分かります。見落としやすいのは月給の人です。基本給が低く、役付手当や皆勤手当で総額を整えている給与の組み方では、総額が多く見えても、比べる対象の額が最低賃金を下回ることがあります。

前の経営者が給与を決めていた会社では、給与の組み方の理由が記録に残っていないことがあります。中小PMIガイドラインは、規程や帳票が無い、または実態と食い違うことがあると書いています(P.53)。給与の明細を1人ずつ見て確かめます。

月給の人は、時間あたりの額に直して比べる

月給の人は、対象にならない賃金を除いた額を、1か月平均の所定労働時間で割って比べます。残業代、賞与、精皆勤手当、通勤手当、家族手当は、最低賃金と比べる額に入りません。

最低賃金特設サイトは対象にならない賃金を次の6つに分けています。

対象にならない賃金例
臨時に支払われる賃金結婚手当など
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金賞与など
所定労働時間を超える労働への賃金時間外の割増賃金など
所定労働日以外の労働への賃金休日の割増賃金など
午後10時から午前5時までの労働のうち、通常の賃金を超える部分深夜の割増賃金など
精皆勤手当、通勤手当、家族手当名前のとおりの手当

比べ方は厚生労働省のセルフチェックシートの式を使います。

  1. 対象になる賃金を足します。基本給、役付手当、住宅手当、交替手当などです。
  2. 1か月の所定労働時間を出します。1日の所定労働時間に年間の労働日数を掛け、12で割ります。
  3. 1の額を2の時間で割ります。この時間額がその事業場の都道府県の最低賃金以上かどうかを見ます。

特設サイトの例を使います。基本給150,000円、職務手当30,000円、通勤手当5,000円、時間外手当35,000円、年間の所定労働日数250日、1日8時間の人です。通勤手当と時間外手当を除くと180,000円で、時間額は180,000円×12か月÷(250日×8時間)=1,080円です。特設サイトの例は最低賃金を1,000円と置いているので、上回る結果になっています。令和8年度の額で比べると、最も低い宮崎県でも1,085円なので、この人の賃金は全ての都道府県で下回ります。

日給と月給を組み合わせている人は、それぞれを時間額に直して合計します。歩合給の人は、歩合給の総額を、その月に実際に働いた総時間で割ります。

発効日までに、承継した会社の賃金を確かめる4つの手順です。

拠点が複数の県にあるとき、派遣の人がいるとき

地域別最低賃金は働いている事業場の都道府県の額を使います。本社と工場や営業所が別の県にあれば、拠点ごとに額と発効日を確かめます。

承継した会社に、本社のある県とは別の県の工場や営業所があることがあります。本社のある県の額だけを見て給与を直すと、発効日の遅い県や額の高い県で漏れが出ます。従業員の名簿に、勤務先の拠点と都道府県の列を足しておくと、毎年の改定で見直せます。

派遣の人には、派遣元の所在地にかかわらず、派遣先の事業場の最低賃金が適用されます。承継した会社が派遣の人を受け入れている場合、賃金を払うのは派遣会社です。それでも、自社の拠点の額が上がったことを派遣会社と確かめておくと、後で単価の見直しの話がしやすくなります。

業種によっては、特定(産業別)最低賃金も決まっています。全国で223件あり(2026年4月1日現在)、地域別と特定の両方が適用される人には、高いほうの額以上を払います。特定最低賃金には、18歳未満や65歳以上の人などが適用されない決まりもあるので、労働局の一覧で業種と対象を確かめます。

下回っていたら、どう直すか

下回っていた分は、差額を払う義務があります。地域別最低賃金を下回る賃金を払うと、最低賃金法に50万円以下の罰金の定めがあります。見つけたら、直す日と差額の扱いを先に決めます。

最低賃金特設サイトによると、最低賃金より低い賃金を双方の合意で決めても、その定めは無効になり、最低賃金と同じ額を定めたものとみなされます。特定(産業別)最低賃金を下回る場合は、労働基準法に30万円以下の罰金の定めがあります。

中小PMIガイドラインは、人事・労務分野の1つ目のゴールに、法令遵守が不十分なら是正することを挙げています(P.100)。同じページの失敗例には未払いの賃金への対応をうやむやにして、キーパーソンが離職した例があります。発効日より後に下回っていた期間があれば、その差額をいつ払うか、従業員にどう伝えるかを、給与の担当者だけで決めずに経営として決めます。

最低賃金に合わせて基本給を上げると、手当とのつり合いや、近い等級の人との差が変わります。ガイドラインは賃金体系の見直しを「機微に触れる部分」として慎重に検討するよう書いています(P.102)。100日のうちは下回っている人を最低賃金以上にすることだけを先に済ませます。体系の組み直しは聞き取りをしてから1年の計画で行います。

今週できること

発効日がまだ来ていない拠点があれば、次の給与の締めまでに確かめます。

判断に迷う計算は都道府県労働局の賃金課や労働基準監督署に問い合わせます。最低賃金特設サイトも詳しい計算は労働局や監督署に尋ねるよう案内しています。

よくある質問

承継の前に発効した分は、誰が直すのですか

株式譲渡なら、使用者も従業員も変わらず、労働契約はそのまま続きます(中小PMIガイドライン P.105)。差額を払う相手との関係は、承継の前後で変わりません。前の経営者との費用の分担を契約で決めている場合は、その条項を確かめます。

残業代の計算の基礎も変わりますか

最低賃金と比べる額と、割増賃金の計算の基礎は、決まりが別です。基本給をもとに割増賃金を計算している会社では、基本給を上げると残業代の単価も変わります。賃金規程の計算式も合わせて見直します。

発効日は変わることがありますか

厚生労働省の答申の別紙は、発効日は異議の申出の状況などで変わる可能性があると注記しています。決定後の日付は厚生労働省の全国一覧と各都道府県労働局で確かめます。

出典

  1. 全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました(厚生労働省、2026年9月3日)別紙「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html
  2. 令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧(厚生労働省。佐賀県の発効日 2026年11月15日、京都府 2026年11月16日、岩手県・熊本県 2026年12月1日、沖縄県 2026年12月2日) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
  3. 最低賃金に関するセルフチェックシート(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001753408.xlsx
  4. 最低賃金特設サイト「対象となる賃金は?」「最低賃金のチェック方法は?」「適用される対象者は?」「派遣労働者の最低賃金は?」「最低賃金とは?」「最低賃金の種類は?」(厚生労働省) https://saiteichingin.mhlw.go.jp/point/page_point_targetwages.html
  5. 中小PMIガイドライン(中小企業庁、2022年3月)P.53、P.100、P.102、P.105 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/pmi_guideline.pdf

この記事の作り方:中小企業庁などの公的な資料を読み、記載のページを確かめて書いています。下書きには生成AIを使い、編集部が資料と照らし合わせて確認しています。制度は改定されることがあるため、手続きの前には必ず原典と窓口でご確認ください。